宿泊業界では、訪日外国人旅行者の増加や観光需要の回復により、人手不足が一層深刻化しています。清掃・フロント業務・レストランサービスなど、多岐にわたる業務を担う人材の確保は、今後の業界発展において重要な課題です。
このような状況を踏まえ、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を受け入れるために設けられたのが、特定技能1号の「宿泊」分野です。
この記事では、宿泊業における特定技能外国人の受入れ状況や、所属機関に求められる条件などを整理します。
宿泊業における人手不足の現状
日本の宿泊業界では、スマートチェックインや清掃ロボット、配膳ロボットなどの導入による効率化が進む一方で、人材不足が依然として深刻な状況です。令和4年度の時点ですでに約2万人、令和10年度には全国で約7万4千人の人手不足が見込まれています。こうした中で、一定の専門性・技能を持つ外国人材を受入れることにより、宿泊業の基盤維持と今後の発展に繋げていくことが重要です。
宿泊分野における主な業務内容
特定技能1号「宿泊」分野において、外国人が従事できる主な業務は次のとおりです。
- フロント業務(チェックイン・チェックアウト、観光案内、ツアー手配など)
- 企画・広報業務(キャンペーン・特別プランの企画、館内案内作成、HP・SNSでの情報発信など)
- 接客業務(館内案内、宿泊客対応など)
- レストランサービス業務(注文応対、配膳・片付け、調理補助など)
また、関連業務として、売店での販売や備品の点検・交換などが想定されています。
人材に求められる技能水準と日本語能力
技能水準
- 「宿泊分野特定技能1号評価試験」に合格すること。
(※本分野に関する技能実習2号を良好に修了した者は試験免除)
日本語能力
- 「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に合格すること。
(※技能実習2号を良好に修了している場合は試験免除)

所属機関に求められる条件
宿泊分野で特定技能外国人を受け入れるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 旅館・ホテル営業の許可を受けていること(旅館業法第2条第2項)
- 風俗営業に該当しない施設であること(風営法第2条第6項第4号)
- 外国人に接待行為を行わせないこと(風営法第2条第3項)
- 「宿泊分野特定技能協議会」の構成員であること
- 協議会・国土交通省の調査や指導に協力すること
- 登録支援機関に委託する場合、上記要件を満たす登録支援機関を選定すること
- 外国人からの求めに応じ、実務経験証明書を交付すること
なお、雇用形態は直接雇用に限られます。
まとめ
宿泊分野では、観光需要の回復や訪日外国人旅行者の増加に伴い、人手不足の深刻化が続いています。特定技能制度を活用することで、宿泊施設の運営を支える外国人材を確保し、業務の安定化やサービス品質の維持を図ることが可能です。
受入れにあたっては、旅館業法や風俗営業法などの関連法令を遵守し、「宿泊分野特定技能協議会」への加入など、所属機関としての要件を満たす必要があります。制度の趣旨を理解し、適正な受入れ体制を整えることが、外国人材と宿泊業界の双方にとって持続的な成長へと繋がります。


