相続手続きでは、被相続人と法定相続人の関係を正確に把握することが欠かせません。
その際に利用されるのが「相続関係説明図」や「法定相続情報一覧図」です。
どちらも相続人の関係を整理できる便利な資料ですが、役割や効力には違いがあります。本記事では、それぞれの特徴と使い分けについて解説します。
相続関係説明図とは?
相続関係説明図とは、被相続人(亡くなった方)と法定相続人の関係を図で整理し、ひと目でわかるようにした書類です。
相続手続きを進めるには、まず「誰が法定相続人なのか」を明確にすることが欠かせません。
金融機関などで相続手続きを行う際には必ず「相続人は誰ですか?」と確認されますが、そのたびに戸籍を取り出して「長男が○○で、長女が○○、こちらは養子で…」と説明するのは大変です。
そこで役立つのが「相続関係説明図」です。これを戸籍謄本などに添付して提出すれば、口頭での説明が不要になります。
さらに、戸籍の原本を還付してもらえるという利点もあります。

作成は必須ではない
相続関係説明図の作成は任意であり、必ず作らなければならない書類ではありません。
ただし、被相続人と相続人との関係が一目で確認できるため、作成しておくと相続手続きがとてもスムーズになります。
なお、相続関係説明図はあくまで「任意の整理図」であり、公的な証明力を持つ書類ではありません。
よく似た名称のものに「法定相続情報一覧図」があります。こちらは法務局に申請して交付を受ける、公的な効力を持つ書類です。
法定相続情報一覧図のメリットと留意点
メリット
- 戸籍謄本の原本に代わる書類として利用でき、手続きを効率的に進められる
- 一度登録すれば、何度でも再発行が可能
留意点
- 相続人の住所を記載した場合は、「住民票記載事項証明書」が必要になる
- 相続放棄をした相続人も一覧図に記載が必要
- 続柄の表記を「長男」「長女」ではなく「子」、「夫」「妻」ではなく「配偶者」とすることも可能だが、その場合、相続税の申告には使えない場合がある
法務局のホームページには、様式や記載例が公開されています。
主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html

どちらを選ぶべきか
一般的な目安としては次のとおりです。
- 相続関係説明図 … 相続手続きの申請先が少ない場合に便利
- 法定相続情報一覧図 … 相続手続きの申請先が多い場合に便利
まとめ
相続関係説明図も法定相続情報一覧図も、被相続人と相続人の関係を明確にすることができる有用な整理資料です。
ただし、作成には被相続人の「出生から死亡までの戸籍」を漏れなく収集する必要があり、結婚や転籍、改製によって複数の戸籍をたどるケースも少なくありません。
ご自身での対応に不安がある場合は、戸籍収集からサポートを受けられる司法書士・税理士・行政書士などの専門家に相談されると安心です。
当事務所でも、相続関係説明図の作成をサポートいたします。お気軽にご相談ください。

