外国人が日本でリモートワーク?-デジタルノマド向けの在留資格(特定活動53号)とは

ビザ・在留資格

近年は、国境を越えてリモートワークを行う「デジタルノマド」と呼ばれる働き方が広がっています。こうした動きを受けて、日本でも令和6年3月に新たな在留資格「特定活動53号(デジタルノマド)」が設けられました。
海外の企業に所属したまま、一定期間日本で働きながら暮らすことができる制度です

本記事では、この「デジタルノマド(特定活動53号)」の対象となる活動内容や要件、在留期間、注意点などをわかりやすく整理します。

デジタルノマド向け在留資格とは

デジタルノマドとは、インターネットを通じて世界中のどこでも仕事ができる人を指します。日本では令和6年3月の法改正により、外国企業との雇用契約や海外顧客とのオンライン業務など、国際的なリモートワークを目的とした外国人の受け入れが新たに可能となりました。
この制度は「特定活動(告示53号・54号)」として位置づけられ、滞在期間は最長6か月です。本人のほか、一定の要件を満たす配偶者や子も帯同することができます。

対象となる活動内容

デジタルノマドの在留資格に該当するのは、日本に6か月を超えない期間滞在して国際的なリモートワークを行う活動です。
次のいずれかに当てはまる場合が対象となります。

  • 外国の企業などとの雇用契約に基づき、オンラインを通じて外国にある事業所の業務に従事する活動
  • 外国の個人や法人に対し、情報通信技術を使って有償で役務を提供したり、物品などを販売したりする活動

ただし、日本に入国しなければ提供や販売ができない活動は対象外です。
また、日本の会社などとの雇用契約に基づく就労はできず、資格外活動も原則として認められません

在留資格を取得するための主な要件

デジタルノマド向けの在留資格を取得するためには、次の条件をすべて満たす必要があります。

  1. 日本での滞在期間が1年のうち6か月を超えないこと
  2. 査証免除国・地域であり、かつ、日本と租税条約を締結している国・地域の国籍を有すること
  3. 申請時点で申請人個人の年収が1,000万円以上であること
  4. 滞在期間をカバーする海外旅行傷害保険などの医療保険に加入していること

配偶者や子の帯同について

デジタルノマド本人の扶養を受ける配偶者と子も、在留資格「特定活動」が許可されれば帯同が可能です。
ただし、本人と同様に「査証免除国・地域で租税条約締結国であること」および「医療保険加入」の条件を満たす必要があります。
帯同者についても、資格外活動は原則認められません

在留期間やカードの扱い

在留期間は6ヶ月以内です。更新は認められません。

また、「中長期在留者」に該当しないため、在留カードの交付対象外となります。

デジタルノマド向けQ&A

Q 日本で知り合った人と契約を結んで新しい仕事を始めても良いですか。

A 日本の公私の機関(個人を含む)と雇用契約や請負契約などを結んで就労することはできません。

Q 滞在期間は最長でどのくらい認められますか。滞在期間が過ぎた後、再びデジタルノマド向けの在留資格「特定活動」で日本に入国することはできませんか。

A 最長6ヶ月で、在留期間の更新は認められません。一方で、日本から出国後6ヶ月が経てば、再びデジタルノマド向けの在留資格「特定活動」で入国することができます。

Q 日本国内の色々な街に移りながら生活したいのですが、何か特別な手続きは必要ですか。

A 特に手続きは要りません。

Q 日本に入国した後、当該在留資格を有したまま日本から出国し、再び戻ることはできますか。

A 在留期間の満了の日以前に再び入国する意図をもって一時的に出国しようとする場合は、「中長期在留者」と同様に、再入国許可またはみなし入国許可による出国が可能です。期限の満了日までに日本に戻れば、当該在留資格を維持することができます。

Q 所得税を納める義務はありますか。

A 多くの場合、日本での滞在期間が課税年度または継続する12か月においても合計183日以下である等の租税条約上の要件を満たせば、日本において免税となります。

Q 本国で買ったパソコンやスマートフォンを持ち込んで利用することはできますか。

A Wi-Fi端末やBluetooth端末を日本国内に持ち込む場合、日本の技術基準適合証明書を取得し、「技術基準適合マーク」が表示されているものに限り、日本国内で使用することができます。
ただし、「技術基準適合マーク」が付されていない端末でも、日本の技術基準を満たしていて、かつ、国際規格に合致している機器の一部については、入国の日から90日以内に限って使用することができます。
また、持ち込んだ端末が「技術基準適合マーク」のない危機であっても、例えば、日本でレンタルしたモバイルWi-Fiに有線で接続するなど、端末自体が直接電波を発しない状態であれば、入国後90日を超えても使用することができます。

Q 「申請人個人の年収が1,000万円以上であること」という要件は、どのような場合に満たされますか。

A 原則として、直近の年収が1,000万円以上であることが必要ですが、例えば、昇給昇格により申請時点から将来にわたる年収が1,000万円以上となることが見込まれるような場合も要件を満たすものと認められます。
個人事業主としてビジネス契約や売買契約を結んでいる場合については、契約金額ではなく、必要となる諸経費を差し引いた利益の金額をもって要件を評価することとなります。
そのほか、複数企業との契約がある場合など、複数の収入があり、かつ、安定的な収入と認められる場合には、合算して年収1,000万円以上と評価できるものであれば、要件を満たすといえます。

Q 申請人が日本以外の国にいる場合、代理人による在留資格認定証明書交付申請はできますか。

A 企業から招へいされる場合などとは異なり、日本に代理人となる方がいないことから、申請人が日本以外にいる場合は、滞在地の大使館または領事館で直接査証申請を行ってください。

まとめ

デジタルノマド向けの在留資格(特定活動53号・54号)は、国際的なリモートワークという新しい働き方を後押しするために設けられた制度です。

6か月以内の滞在期間中、日本国内で海外の企業や顧客とのオンライン業務を行うことができますが、日本の会社などとの雇用契約に基づく就労は認められていません。

また、対象となる国籍や年収など、いくつかの明確な要件が定められています。新しい制度であるため、今後も運用や手続きに関する情報が更新される可能性があります。