SAF(Sustainable Aviation Fuel)は、廃棄物や再生可能資源を原料とする持続可能な航空燃料です。従来のジェット燃料と比較してCO2排出量を大幅に削減できるため、次世代の環境負荷軽減燃料として注目されています。この記事では、SAFの基本情報から課題、そして今後の展望や地域の取り組みについて解説します。
持続可能な航空燃料SAFとは?
SAFは「Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)」の略称で、再生可能な材料や廃棄物を原料とする航空燃料です。燃焼時にCO2排出量としてカウントされないバイオマスや、化石由来の廃プラスチックなども原料になる可能性があり、カーボンニュートラルに貢献する航空燃料として活用が期待されています。
SAFの原料と可能性
SAFは、古着、家庭ごみ、使用済み食用油など多様な廃棄物から製造できます。未利用の廃棄物を活用すれば、最大424万キロリットルのSAF生産が可能とされています。
従来の航空燃料と同等の性能を持ちながら、CO2排出量を大幅に削減できるSAFの需要が高まっているため、廃食用油の価値が世界的に上昇し、争奪戦が起きています。しかし、日本国内ではSAFの普及が進んでおらず、飲食店で使用された天ぷら油などの廃食用油は、主に家畜飼料の原料や海外への輸出に利用されているのが現状です。
SAFの主なメリット
・CO2排出量の削減:航空機は輸送手段の中でもCO2排出量が多いため、SAFの利用はカーボンニュートラル達成に貢献します。
・既存インフラの利用:SAFは従来の航空燃料と互換性があり、特別な改修なしで使用できます。現在は従来燃料と最大50%まで混合可能ですが、将来的には100%SAF対応の航空機も開発される見込みです。
・廃棄物の削減:家庭ごみや廃棄された食品・食用油などから作ることができるSAFは、廃棄物の再利用に貢献する燃料です。国内生産が可能な点は、エネルギー輸入に依存する日本にとって大きな利点です。
課題と今後の展望
・原料収集:SAFは従来の航空燃料と同じ性能を保ちながらCO2排出量を大幅に削減できるため、世界的に廃食用油の需要が高まり、争奪が激化しています。しかし、日本ではSAFの普及が遅れており、飲食店から出る天ぷら油などの廃食用油は、家畜飼料として利用されたり、海外へ輸出されたりしているのが現状です。
・生産量不足:SAFの普及には原料不足に加え、製造技術の確立や設備投資の支援が課題となっています。今後は、藻類バイオマスや未活用の低質廃棄油脂、さらには2050年に向けて増加が予想される水素を原料とするSAFの生産拡大が重要なポイントになると考えられています。
・高コスト:SAFは原油から精製する従来の航空燃料より製造工程が複雑であり、新技術の開発には投資も必要なため、普及段階ではコストが高くなりがちです。メーカーがSAFの量産を進めるためには、技術革新などを通じた大幅なコスト削減が欠かせません。
大阪での取り組み
SAFの原料の1つとなる廃油の確保も簡単ではありません。飲食店や食品工場から廃油を回収する業者などで作る業界団体によりますと、廃油の多くは、国内の家畜の飼料の原料などとして再利用されていますが、世界的に廃油の需要は高まっています。こうした状況を受けて、いま、注目を集めているのが家庭から出る廃油です。
多くの飲食店が集まる大阪でも、店舗で使われた廃油を回収し、SAFの原料などとして使おうという取り組みが始まっています。2025年度からSAFの生産が予定される堺市では、使用済みの食用油を回収する取り組みを始めることになりました。9割以上が捨てられているとされる家庭から出る廃油を回収することがねらいで、廃油はSAFの生産に使われる予定です。その他、和歌山県や京都府亀岡市、神戸市も市役所に廃油の回収設備を設置するなど、取り組みが活発になっています。
まとめ
SAFは廃棄物を原料とし、CO2排出削減と廃棄物再利用に貢献する持続可能な航空燃料です。国内普及の鍵は原料確保とコスト削減であり、大阪をはじめとする地域で廃油回収の取り組みが始まっています。