建設系廃プラスチックの再資源化

産廃業

建設系廃プラスチックの再資源化率は依然として低く、特に混合廃棄物の分別が大きな課題となっています。一方で、建設廃棄物全体の排出量は減少傾向にあり、分別の徹底や再資源化の取り組みが進展しています。この記事では建設系廃プラスチックの現状や再資源化の課題について見ていきます。

建設系廃プラスチックの発生

廃プラスチック全体の発⽣と再資源化の実態

建設業界で発生する廃プラスチックの再資源化は、大きな課題となっています。2020年の国内樹脂生産量は963万トン、樹脂製品消費量は841万トンであり、そのうち建材用途は10.8%にあたる91万トンを占めています。一方、廃プラスチック総排出量は822万トンで、このうち建材由来は7.1%にあたる59万トンです。

建設系廃プラスチック

国土交通省の調査によると、「廃塩化ビニル管・継手」「その他の廃プラスチック」「混合廃棄物」の再資源化率はいずれも50%程度で、他の建設廃棄物品目に比べて低い水準にあります。また、混合廃棄物の最終処分量は84万トンに達し、建設廃棄物全体の約40%を占めています。この状況を改善するためには、建設現場での混合廃棄物の分別促進や廃プラスチックの再資源化が重要です。

⼯事区分別の排出量、再資源化率

廃プラスチック、廃塩化ビニル管・継⼿、混合廃棄物ともに、建築⼯事からの排出量が建設⼯事全体の約80%を占めており、特に新築・増改築工事が主な発生源です。再資源化率は工事区分ごとに大きな差はないものの、新築工事では50%以上と比較的高い水準を示しています。これは、新築工事で発生する廃棄物が汚れにくく、まとめて再資源化施設に搬出しやすいためと考えられます。一方、修繕工事では再資源化率が35%と低く、工事規模の小ささによる再資源化施設への搬出コスト面等が課題となっています。

経年データによる建設混合廃棄物の排出、再資源化率

経年データによれば、建設混合廃棄物の排出量は減少傾向にあります。平成30年度の建設混合廃棄物の排出量は228万トンであり、平成7年度の952万トンと比較して24%にまで減少しました。この減少には、コンクリート塊や建設発生木材といった再資源化施設の整備が進み、現場での分別が促進されたことが寄与しています。

プラスチック建材・設備の⽤途

建設現場で使用されるプラスチック建材には、給排水管や断熱材、床材、壁紙など多岐にわたる製品が含まれます。特に、床材については近年プラスチック建材が主流となっており、プラスチック建材の用途はますます広がっています。

廃プラスチックの有効利用に係る今後の方向性

建設系廃プラスチックは建設リサイクル法における特定建設資材廃棄物の対象外であり、再資源化の義務付けがされていない現状があります。アスファルト・コンクリート塊、コンクリート塊及び建設発⽣⽊材といった法の義務付けの対象となっている特定建設資材廃棄物は、建設リサイクル法の制定後に再資源化等率が上昇してきた経緯があることから、今後、再資源化施設の整備状況などを考慮し、建設系廃プラスチックを特定建設資材として義務付けることが検討される可能性があります。また、令和4年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法に基づき、建材メーカーや建設業者には環境配慮設計や再資源化への対応が求められています

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000060/20220401_000000000000000

複合建材の分別・再資源化に係る課題

建設工事で発生する複合建材の種類

複合建材の分別や再資源化も課題です。複合建材には、ウッドプラスチックのように異素材を混合した製品や、製造段階で異なる素材を貼り合わせたもの、施工現場で複合化したものなどが含まれます。これらは性能や耐久性、経済性を考慮して設計されており、近年ではペットボトルのリサイクル材を使用したウッドプラスチックや、省エネルギー性能を向上させる樹脂サッシなど、環境に配慮した製品も増えています。しかしながら、複合建材全体の生産量や実態は、業界団体でも把握が難しいのが現状です。

再資源化に向けた課題、対応策

複合建材は、新築⼯事よりも解体⼯事の⽅が多く発⽣すると推測されるため、再資源化を進めるには、解体工事で発生する廃複合建材への対応が重要です。これらは組成が不明確で、一体不可分な構造を持つものが多く、再資源化が困難となっています。このため、建材メーカーによるアプローチが重要であり、建材への素材情報の明記や、建材の強度や省エネ性等を勘案したうえで可能な範囲での単一素材化への取り組みが求められています。

まとめ

建設系廃プラスチックの再資源化率は低く、特に混合廃棄物の分別が課題です。新築工事では比較的高い再資源化率を示すものの、修繕工事ではコストや規模の制約が再資源化の障壁となっています。一方で、建設廃棄物の排出量は減少傾向にあり、分別と再資源化の促進が進んでいます。複合建材については、一体不可分の構造が多く、再資源化が困難なため、建材メーカーによる素材情報の明記や単一素材化の取り組みが求められます。今後は法規制や技術革新を通じて、持続可能な建設資材利用と再資源化の推進が重要です。