産業廃棄物不法投棄をなくしたい

産廃業

産業廃棄物の不法投棄は、環境破壊や健康被害の原因となり、深刻な問題です。本記事では、日本における不法投棄の現状と、それが環境に与える影響を解説します。また、不法投棄を防止するための具体的な対策や支障除去事業に対する財政支援についても触れ、持続可能な社会を実現するための提案を行います。


1.産業廃棄物不法投棄の現状とは

日本における不法投棄の実態

環境省では、毎年度、都道府県等の協力を得て、産業廃棄物の不法投棄等対策に係る政策形成のための基礎資料とすること等を目的として、新たに判明した不法投棄等事案の状況及び年度末時点の不法投棄等事案の残存量等を調査し、公表しています。令和4年度の調査結果は以下の通りです。

令和4年度に新たに判明した不法投棄事案
不法投棄件数134件(前年度107件)[+27件]
不法投棄量4.9万トン(前年度2.2万トン)(前年度2.2万トン)
令和4年度に新たに判明した不適正処理事案
不適正処理件数107件(前年度131件)[-24件]
不適正処理量2.6万トン(前年度10.9万トン)[-8.3万トン]  
令和4年度末における不法投棄等の残存事案
残存件数2,855件(前年度2,822件)[+33件]
残存量1013.5万トン(前年度1547.1万トン)[-533.6万トン]

不法投棄の新規判明件数は、ピーク時の平成10年代前半に比べて、大幅に減少しているものの、日本では産業廃棄物の不法投棄が依然として社会問題となっています。廃棄物の管理不足やコスト削減を目的とした違法な処理が原因です。特に建設廃材や化学物質などの不法投棄は、土壌汚染や水質汚染を引き起こし、地域の環境に深刻なダメージを与えています。これらの廃棄物は山間部や海岸部など、人目に付きにくい場所に違法に廃棄されることが多く、問題が発覚した時にはすでに多大な被害が生じています。

産業廃棄物が及ぼす環境への影響

不法投棄された産業廃棄物は、自然環境に重大な影響を与えます。水質汚濁や土壌汚染等の環境面での影響はもちろんのこと、原状回復費用等の経済的損失をもたらすほか、周辺地域のコミュニティも破壊する等、極めて大きな社会的影響を与えています。さらに、大量の廃棄物が自然景観を損ない、観光業や地元経済にも悪影響を与える可能性があります。

2.不法投棄を防ぐための対策

監視カメラの設置と効果

不法投棄を防ぐために、監視カメラの設置が有効です。特に不法投棄が多発する場所に監視カメラを設置することで、投棄行為の抑止効果が期待されます。また、録画データを元に違反者の特定が可能になり、罰則の適用が容易になります。

地域へのパトロールと連携の重要性

地域のパトロールも効果的な対策です。自治体や警察、地域住民が協力して定期的に巡回することで、不法投棄のリスクを低減させることができます。地域全体での協力が求められ、情報の共有や通報体制の整備が重要です。

私有地の管理と不適正処理の防止

私有地の管理も重要です。不法投棄は管理が行き届いていない土地で発生しやすいため、所有者は定期的に土地を確認し、不法投棄が行われないように注意を払う必要があります。また、企業や個人が廃棄物処理業者を選ぶ際には、適正な処理を行っているかどうかを確認することが不可欠です。

3.不法投棄等の支障除去事業に対する財政支援(産業廃棄物適正処理推進センター基金)

基金制度の効果

行政代執行費用の財政負担が多大であっても躊躇することなく、行為者等に対し迅速に措置命令を発出できることが挙げられます。また、他県から入ってきて不法投棄等された産業廃棄物になぜ地元自治体の財源を充てて支障除去等を行うのかという指摘に対し、産業界による基金への協力があって支障除去等事業が成り立っているということを十分に説明することで、地元関係者の理解が得られやすくなっています。さらに、行政対応に大きな問題があることが確認された場合には支援の対象としないとされていることが、都道府県等にとっては迅速な措置命令の発出などに向けた動機づけとして働くこととなり、未然防止や早期対応の観点からも有効に機能しています。

基金による支障除去の実施例と基金制度

支障除去の事例については、基金を管理している産業廃棄物適正処理推進センター(公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団)のWebサイトに掲載されています。

原状回復支援事業・事例集|公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団

廃棄物の適正処理は、排出事業者に課された責任であり、良好な生活環境の保全や、地域循環共生圏の構築にも資するものです。不法投棄の未然防止のために、国及び都道府県等では、規制・監視を強化していますが、不法投棄の撲滅には至っていません。生活環境保全上の支障が生じ、原因者等が不明な場合には、都道府県等が代執行を行いますが、その費用は産業界と国が積み立てた基金から一部補助しています。

近年、基金残高における産業界の負担分が減少し続けていて、毎年度支援できる額が目減りしており、大きな事案が発生した場合に莫大な費用が必要となるため、基金が枯渇することが懸念されます。令和3年度以降の支援の在り方については、マニフェスト頒布団体等以外の産業界の関係団体等にも、より幅広く任意の出えん協力依頼を行っていくことで、満額の確保を目指すことが示されています。

まとめ

日本では、廃棄物処理法によって、産業廃棄物の処理に関する基準が定められています。この法律は、廃棄物が適正に処理されるように規制を行い、違反者には厳しい罰則を科します。排出事業者は、この法律に基づいて廃棄物の処理を適切に行う義務があります。しかし、不法投棄は現在も後を絶ちません。不法投棄撲滅には排出事業者や企業・自治体含め社会全体での取組みが必要となります。