石綿含有産業廃棄物の飛散防止対策

産廃業

石綿含有産業廃棄物の適切な運搬は、健康被害の防止や環境保護の観点から非常に重要です。本記事では、石綿の危険性や飛散リスク、運搬業者が守るべき基準や法的規定、具体的な飛散防止策について詳しく解説します。


1.石綿含有産業廃棄物の運搬における飛散防止対策の重要性

石綿とその危険性について

石綿(アスベスト)は、優れた耐熱性や絶縁性を持つため、建築材料などに広く使用されていました。しかし、石綿(アスベスト)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で、体内に吸引することによる発ガン性を理由に、建築工事における石綿の吹付け作業は昭和50年に原則禁止に、スレート材、ブレーキライニング、ブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材など石綿を原材料として使用した製品(石綿含有製品)は、現在は原則として製造禁止となっています。平成17年6月に、石綿製品製造工場で作業歴のある従業員等に中皮腫等の健康被害が多発していることが公表され、これを契機に、石綿の大気環境中への飛散に伴う健康被害についての懸念が高まり、「石綿による健康被害の救済に関する法律」が平成18年3月27日に施行されました。石綿(アスベスト)を産業廃棄物として処理される際には、飛散を防止することが最重要課題です。

運搬時における飛散リスクとは

運搬時は、廃棄物が揺れたり破損したりすることで石綿が飛散するリスクが高まります。適切な梱包や容器の選定が行われていない場合、運搬中に飛散が発生する可能性があり、周囲の環境や人々の健康に重大な影響を及ぼします。

規制・基準の概要

日本では、石綿含有産業廃棄物の取り扱いに関して厳しい法規制が設けられています。使用済みの石綿含有製品については、その性状により、廃棄物処理法によって処理規定が定められています。運搬においても、飛散を防止するための具体的な基準や規定が法律で定められており、違反すると罰則が科されることもあります。

石綿含有廃棄物の定義

石綿含有廃棄物とは、次に掲げる①及び②をいう。

 ① 石綿含有一般廃棄物 工作物の新築、改築又は除去に伴って生じた一般廃棄物であって、石綿をその 重量の0.1%を超えて含有するもの

② 石綿含有産業廃棄物 工作物の新築、改築又は除去に伴って生じた廃石綿等以外の産業廃棄物であっ て、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの

2.排出事業者による管理体制

石綿有無の事前確認

法では事前確認についての規定はありませんが、石綿障害予防規則では、第3条において、『事業者は建築物、工作物又は船舶の解体、破砕等の作業(吹き付けられた石綿等の除去作 業含む。)、又は、石綿等の封じ込め又は囲い込みの作業を行うときは、あらかじめ、石綿等の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、その結果を記録しておかなければならない』としています。

処理計画の策定

排出事業者は、石綿含有産業廃棄物の適正処理を図るため、これらの処理に関し、処理計画を作成します。作成にあたっては、発注者からの情報をもとに、自ら行った情報収集や現地確認により石綿使用の全体像を把握し、必要事項を記載しなければなりません。また、処理計画は必要に応じて変更が必要です。

3.運搬業者が知っておくべき基準と要件

産業廃棄物運搬業の許可要件

石綿含有産業廃棄物を運搬するには、都道府県知事からの許可が必要です。許可を受けた運搬業者は、適切な技術と知識を持って廃棄物の取り扱いを行うことが義務付けられています。

飛散防止に関する法的規定

石綿含有産業廃棄物の運搬は、「大気汚染防止法」や「廃棄物処理法」に基づいて、飛散防止策を徹底する必要があります。これには、適切な梱包密閉された容器の使用適切な車両の使用などが含まれます。

適正な業務を行うための基準

運搬業者は、運搬時のマニフェスト管理や、廃棄物の適切な処分方法の確認も行う責任があります。また、運搬中に発生した事故に対しても迅速に対応できる体制を整える必要があります。


排出について

■解体時等の留意点

石綿が吹き付けられた、又は、石綿を含む建築材料が使用された建築物・工作物の 解体等、又は、特定粉じん発生施設において、石綿含有廃棄物等を排出する際には、 以下の事項に留意しなければなりません。

 ① 石綿の飛散防止作業員等のばく露防止石綿含有廃棄物等の分別排出

■事業場における保管と飛散防止

排出事業者は、その産業廃棄物が運搬されるまでの間、産業廃棄物に係る保管の基準に従い、生活環境の保全上支障のないようにこれを保管しなければなりません。事業者は、石綿含有産業廃棄物の飛散を防止するため、石綿含有産業廃棄物 が運搬されるまでの間、覆いを設けたり、こん包するなどの措置を講ずることが必要です。

  • 荷重により変形又は破断しないよう整然と積み重ねる。
  • 飛散しないようシート掛け、袋詰め等の対策を講ずる。

■適切な容器の選定と使用方法

石綿含有廃棄物の運搬には、密閉性の高い容器を使用し、廃棄物が飛散しないように厳重に封をすることが重要です。これにより、運搬中の揺れや衝撃によって廃棄物が破損するリスクを軽減します。また、石綿含有産業廃棄物については、容器等への表示の義務はありませんが、石綿含有産業廃棄物 の混入や飛散を防止するために、覆いや袋詰め容器等に石綿含有産業廃棄物である旨及び取り扱う際に注意すべき事項を表示することが望ましいとされています。

■運搬車両の飛散防止策

運搬車両自体も、石綿の飛散を防ぐための特別な対策を施す必要があります。例えば、密閉式の荷台や、廃棄物を固定するための専用の機器を使用することが推奨されます。

事故発生時の対応方法

■飛散が確認された際の措置

万が一、石綿含有廃棄物が飛散した場合、迅速に現場を封鎖し、飛散した石綿を適切に除去することが必要です。また、関係機関に速やかに報告し、対応を協議することも重要です。

■環境への影響評価と対策

飛散が発生した場合、その影響範囲を評価し、周辺の環境に及ぼす影響を最小限に抑えるための措置を講じることが求められます。

■関係機関への報告義務

石綿飛散が発生した際には、所定の手続きに従って、環境省や地方自治体などの関係機関に速やかに報告することが法律で定められています。

まとめ

石綿含有廃棄物を適正に処理することで、飛散による環境汚染を防ぐだけでなく、地域社会への影響も軽減されます。石綿の適切な除去は、地域社会の健康と安全に直結する重要な課題です。環境保護だけでなく、地域への貢献としても重要な取り組みです。今後も石綿に関する規制や基準は強化される可能性が高いです。業界としては、新しい法令に迅速に対応するための準備が求められています。また、技術の進展により、より安全で効率的な石綿含有産業廃棄物の管理方法が開発されつつあります。これにより、業務の効率化とリスク低減が期待されています。