産業廃棄物の適正な処理は、環境保護や持続可能な社会の実現において重要な課題となっています。産業活動から生じる廃棄物の量や処理方法、最終処分場の容量、不法投棄などの問題に直面しており、特にダイオキシン類の排出や管理も大きな懸念材料です。この記事では、産業廃棄物処理に関連する6つの要素について現状を解説し、その課題と対応策を整理します。
1. 産業廃棄物排出量
産業活動が活発な日本では、膨大な量の産業廃棄物が日々発生しています。令和3年度の廃棄物の排出量は、約3億7,100万トンと推計されています。産業廃棄物の処理の割合は、全体の53%が再生利用、45%が中間処理等での減量化、2%が最終処分と推計されています。産業廃棄物は適切に処理されなければ、環境に悪影響を与え、持続可能な社会の実現わが国の産業に対する障害となります。廃棄物の種類に応じた適切な処理が不可欠です。
2. 最終処分場の残余容量
最終処分場は、産業廃棄物の最終的な処分地として機能しますが、その容量には限りがあります。日本全国の最終処分場の残余容量は年々減少しており、限界に達する地域も少なくありません。最終処分場の残余容量は、令和4年4月1日現在で、約17,109万立方メートルとなっています。令和3年度の最終処分量及び令和4年4月1日現在の最終処分場の残存容量から最終処分場の残余年数を推計すると、全国では19.7年です。この問題に対処するためには、廃棄物のリサイクルや減量化、再利用を促進することが不可欠です。廃棄物の発生自体を抑制する取り組みも求められています。
3. 産業廃棄物処理施設の設置許可件数
産業廃棄物の適正処理を行うためには、専用の処理施設が必要です。これらの施設を設置するには、政府の厳格な基準を満たす必要があり、適切な設備を整えた企業のみが処理施設の設置許可を受けることができます。許可件数は地域によって異なりますが、年々需要が高まり、設置数も増加傾向にあります。令和4年4月1日現在の産業廃棄物処理施設の設置許可件数は、中間処理施設が19,413施設、最終処分場が1,568施設です。中間処理施設の種類は、木くず又はがれき類の破砕施設が中間処理施設全体の約55%(10,695施設)と最も多く、次いで汚泥の脱水施設が約14%(2,677 施設)となっています。最終処分場は、安定型処分場が最終処分場全体の約60%(931施設)となっています。適正な管理の下、廃棄物の安全な処理が求められています。
4. 産業廃棄物処理業の許可件数
産業廃棄物処理業を営むためには、各自治体や国からの許可が必要です。この許可は、企業が廃棄物を安全かつ適切に処理できるかを判断するためのもので、定期的な審査や更新が行われています。令和4年4月1日現在の産業廃棄物処理業の許可件数は約23万5千件です。そのうち、約94%(約22万1千件)は収集運搬業の許可件数、残りの約6%(約1万3千件)は処分業の許可件数です。処理業者が不適切な処理を行わないように、厳格な監視体制が敷かれていますが、それでも違反事例は発生しています。
5. 不法投棄
不法投棄は、産業廃棄物処理の大きな課題です。不正に廃棄物を投棄することで、環境汚染が引き起こされ、地域住民に対する健康被害のリスクも高まります。日本では、こうした不法投棄に対する取り締まりを強化し、罰則を厳しくすることで抑止を図っています。不法投棄の新規判明件数は、ピーク時の平成10年代前半に比べ、大幅に減少しており、一定の成果が見られます。しかしながら一方で、令和4年度で年間134件、総量4.9万トンもの悪質な不法投棄が新規に発覚し、後を絶たない状況にあります。依然として不法投棄の問題は根深く、解決に向けたさらなる取り組みが求められています。
6. 産業廃棄物焼却施設から排出されるダイオキシン類
産業廃棄物を焼却処理する際に発生する排ガスには、ダイオキシン類という有害物質が含まれています。ダイオキシン類は、人体に悪影響を及ぼすため、その排出量を厳しく管理することが求められています。令和元年度に産業廃棄物焼却施設から排出された排ガス中のダイオキシン類排出量は17グラム/年と推計されています。政府は施設に対し、最新の技術を用いて排ガス中のダイオキシン類を極力低減するための規制焼却を強化しており、各施設もそれに応じた設備投資を行っています。
まとめ
産業廃棄物の処理には、適正な管理と持続的な対策が必要です。廃棄物の排出量や最終処分場の容量、処理業者の許可状況など、様々な側面から問題を考察し、適切な対応策を講じることが、環境保全にとって不可欠です。また、ダイオキシン類の管理や不法投棄の取り締まりも、将来の課題として引き続き注目されています。